fujinosekaic’s 世界史授業備忘録

世界史教員生活30年記念

17 日本の夏 キンチョウの夏

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days to remember

 数年前の楽曲になるがサザンオールスターズが「ピースとハイライト」の中で「現代史が大切なのにいつも時間切れ」と歌った。歴史担当者としては「なんでそうなっちゃうのか」を含めて詳しく教えて行きたいが、そんなカリキュラムで展開・指導せねばならない日本の歴史教育が残念でたまらない。

  この授業自体は夏休み明けの時期限定で実施してきた。この日付は他の時期からスタートしても可能であろう。日本史的には二月や五月も避けて通れないだろう。また、様々な楽曲を挿入するのも授業が楽しくなる。特にJポップやジャニーズ系など「歌詞が理解しやすい」日本語の楽曲も良い。実際、この授業では嵐の夏の終わりに想うこと」を使ったこともある。当時の若者が戦争の犠牲になった「夏の終わり」を実感してもらった。また、若者という視点では三月一日のソウルでの学生運動=万歳事件の写真を教科書で確認することで、タプコル広場(ソウルの中心地の仁寺洞)を訪れた事のある生徒(国際高校時代は修学旅行で全校生徒が、杉並総合では姉妹校交流と語学研修参加者が)にとってはリアルな実感を持ってもらえた。これら抗日運動がなぜ起きたか、そしてそれをどのように権力側が弾圧してきたかを考える良い機会である。更にちょうど百年前の出来事ということもあり、単なる歴史の一ページというよりは、今につながる歴史を実感させてきた。

特に、北京の天安門から香港での雨傘運動を経て、現在に至る抵抗運動を日付つながりで考える意味も大きい。その根底には権力側の弾圧と暴力がある事に気が付くことは大切であろう。また、これらの流れをソーシャルネットワーク:SNSでほぼリアルタイムで見ている彼らにとって、ソウルでの抵抗運動が北京の学生に大きな影響を与えた歴史を知る意味は大きい。

百年前の天安門での写真と三十年前の「天安門事件」の写真を教科書(山川詳説等にも掲載)で見比べる事や、その一連の背景があって今年の「香港の夏」であり、高校生銃撃につながっている事を同じ高校生として考える機会にもなる。少なくても「異見表明権(言論の自由)」を保障したいという香港等の高校生たちとも交流経験(国際交流基金ジェネシス企画で来日する高校生らを毎年受け入れてきた)がある本校生徒としては、他人事としては決して思えないと生徒は言う。また、彼らのSNSでは大人より早く現地の情報が入手できる事も多い。TVなどのメディアを経由せずともネット経由で情報を獲得している時代である。また、日本の敗戦はアジアの独立でもあり、特に五年前からインドネシアの孤児院でボランティア活動を継続している本校では、地域の独立記念の行事にも参加し、その意味を理解している生徒が毎年十名ほど存在する。その後の歴史的な展開にも日本が大きく関与していることや、独立に至るまでにどんな悲劇があったかも知っている。現地の協力NGOや同年代の若者達との交流を通して、日本の在り方を真剣に考える機会にもなっている。そんな中で日付が持っている意味(更に「皇紀」の表記もある!)知ることで改めてインドネシア、日本、旧宗主国のオランダとの関係を考えるきっかけになる。ムルデカとはインドネシア語で独立                  という意味であり、その独立宣言の日が「敗戦の日」の二日後であるのだ。