fujinosekaic’s 世界史授業備忘録

世界史教員生活30年記念

高大連携歴史教育 第三部会 フロアからの質問への回答

(1)Fさん(高校教員
● 今まで世界史を教えてきて、生徒に世界観(世界全体の大まかな地誌的概念)がない、中学校でも、高校の地理でも身についていないことに苦労してきました。先生は、そのことを、どう克服されてきましたか。
1 僕も苦労しています。ただし、できるだけ世界史の現場に出て行くことで皮膚感覚的な体験(観光旅行ではない)を生徒らに伝えて来ました。またIct化の昨今では動画として作成し、ネットから随時アクセスできるようにしています。その意味でも今回の発表にもリンクを貼ってます。その意味からも、イギリス帝国主義の概念を具体的に把握することで、フランスやオランダが、アフリカにおいてはベルギーやドイツが行った事を想像できるようになると思います。ロンドンやパリに行って記念写真撮ってくるのでは意味がありません。もしくは欧米で列強が行った植民地政策そのものの矛盾点を生徒自らの手で確認し、調べていくことができるきっかけになることも多々あります。最近では中国のアフリカ進出に呼応するように、日本もアフリカへの援助を積極的に進めており、教育現場でも交流を深めようと言う動きがあります。しかしこの帝国主義の概念を学ぶことで、その社会情勢の不安定さや貧困の責任の所在はヨーロッパ列強の国々にあることが確認できるのです。実際にイギリスだけではなくオランダ政府がインドネシアで行った事も過酷なものがあることは強制栽培制度として教科書にも出てきます。鉄道建設にしても植民地の農産品をスラバヤやジャカルタの港につなげると言う植民地政策も意味してます。
スライドの中にも入れたインドネシア国鉄の博物館@Java島にもこの夏2023自力で行ってみました。
その意味ではある程度地理総合や、中学校で世界を学習してあることが相互補完になる、いや前提条件だろうとおもいます。もちろん既習事項として世界を扱うことが少なくなっている現実があるが、それでもある程度の予備知識を持っていれば世界の状況を把握し、その課題や問題がこの帝国主義の結果であると言う事をを理解することになるでしょう。ただし残念なことに同じ社会科とは言え地歴公民に2分割された潜在的な影響として、地理の中でどのような内容や指導があり、どんな学習方法が展開されているかを把握している歴史教員は少ない。教科の部屋が無くなり、職員室で分掌等の事務仕事に追われる中、特に昨今のカリキュラム変更に伴い過去に自分が経験してきた授業ではない物を充分に把握できていない教員も少なからず存在する。だからといって強制的にでも時間が研修として確保できてはいない中で、この学び=最近の表現ではリスキリングが学校現場では行われにくい現実がある。いやそれだけでなく同じ科目の中で世界史教育と歴史教育や、日本史教育の把握が相互にできているとも言い難い。自分自身の不勉強でもあるが、これが悲しい現実である。その意味でも具体的にどんな授業が展開されているかや、教材の開示や紹介などを積極的に進めて欲しいところだ。授業公開とは言え他の世界史教員の授業を見ることもできないのも困ったものです。
(2)Gさん(大学教員)
1 「グレートゲーム」を教材にされている点は、評価できると思います。ロシアの帝国膨張は、軽視されてきた。=左近幸村『海のロシア史』
展開:どのように発展させていくのか? どういう現代的課題か?
1 生徒のコメントの中にもボンベイの話しが出ていました。これ生徒がリフレクションとして自分で調べてきたのです。嬉しかったです。これってカルカッタでは無いんです。またロシアの動きはプーチン動向と併せて関心は高いです。ウクライナでは18歳から60歳までは兵役の義務もありますし、ロシアの戦車兵も生徒たちと年齢も近いことがあります。更に、日露戦争と関係も生徒からの話題に出る。これに限らずロシアの動向をあまり世界史では扱わないのには疑問が残る。クリミア半島なくして三浦半島なしなのであるが。なぜペリー来航が1853年なのか。決して偶然の一致ではないだろうと思います
2 インドの鉄道建設
1. 市場開発―原綿輸出→日本(大阪)への輸出が多い。ex秋田茂のボンベイ航路論
2. 金融の問題 利子保障制度 本国費の問題 金融の視点が弱いのでは
(1) 第一学習社 「歴史総合」教科書 鉄道特集 アジア間貿易特集
2 反面インドの植民地支配のそれは債務問題とも関係しており、イギリス製品が売れないと言う状況の中でいかに貿易収支を有利にするかと言う意味がある。その意味ではアヘン戦争の構造と同じような意味を持っている。対して中国本土ではイギリス単独では進むことをができなくなったため、融資を何カ国で進めると言う国際金融組織が見え隠れする。しかし残念ながら教科書でのご説明は無い。この点はスエズ運河のところでディズレーリ首相を取り上げたことからも、世界史を学んでいる人にはぴんときたことかと思う。この辺りのところは教科書には書けないのかも知れないならば、これこそ歴史教員の本務として指導すべきでは無いだろうか。年表だけで考えていくと単純にエジプト側の政治的/経済的な失敗(特に南北戦争終了後の商品作物市場の暴落)と、反対にではあるが金融問題としてもこの裏の国際金融機関的な存在があったのではなかろうかと定年直前になって気づいた次第である。ロスチャイルド家からの紹介と融資では話しがあまりにも良く出来過ぎている。現在でも欧米諸国とアジアアフリカ社会の産業構造の典型的なパターンとして、コーヒーやカカオなどの農産品や地下資源に大きく依存する社会と、そこに投資をしたり経営をしたりと言う構造が厳然として存在するのである。その経営者/投資家達には国籍も国境も関係ない。今話題のオッペンハイマー家を探究すると面白いだろう。少なくとも彼ら一族に翻弄された日本人は少なくない。いや、そんな明治以来の国民国家的な集団としての縛りにこだわっているのは日本人だけかも知れ無い。司馬史観の影響であろうか。世界は寧ろ個人であったり、一族ファミリーで動いているのが現実だろう。企業活動に国境は無いのが資本主義社会だろう。たとえ日本の水道民営化の結果や、関西空港の運営が外資のフランス企業であったとしてもである。金融教育の大切さがさけばれている昨今ではあるが、そんな国境を超えた金融機関の歴史を学ぶことも大切では無いだろうかと、毎年夏になると思い出すのがプラザ合意と123便でもある。お金には国籍は無いにも関わらず、直ぐに陰謀論で片付けてしまうこの日本の世論だか、歴史的事実は直視して欲しいところです。この辺りのところは受験生のバイブル詳説Y社は弱いですね。詳しく書けない事情でもあるのでしょうか。今後は勤務校では採択していませんがD社も参考に見ていきたいところです。
 こんなの作りました。
https://fujinosekaic.hatenablog.com/entry/20230801/1690882749
鉄ちゃん向けの記事はこれで!

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